593.シートベルト

帰りのエレベーターを降りる。
ぎゅーっと先生に抱きついてたら、べりっと剥がされた。

「くっつきすぎ」

「……」

さっきの管理人さんに見つかるかもしれんもんな。
そしたら先生が気まずいよな。私大人っぽくないし。

そうやって自己完結して、静かに先生から離れたら「やけに素直やな」と言われた。


「管理人さんおるもんな…」

さっきまで、ベッドの上でしてたことは恋人同士の行為なのに、外では違うことに寂しさが増す。

「管理人さん?」

先生は首を傾げている。

「私がおることで変な目で見られたくないやろ?」

「…………」

あ、卑屈な言い方したかな?
先生は、返事をしないで、私の顔を見ていた。

エレベーターのドアが開く。
時間外のため、もう管理人さんはいなかった。
そして、先生が話し出す。

「いい人やで。管理人さん」

「それはそうやろな」

「何か言われたん?」

「言われてないけど……」

「俺は、変な目で見られようが、別にいいよ。だから、そんな顔せんといて」

駐車場に出て、先生にぽんぽんと頭を撫でるようにされる。


「そんなんばっかり気にして、みなみがここに来ーへんようになるのは嫌やな」

「それはないよ」

「そうか。じゃあ、俺らがこれでいいんやから、もうそういうこと言うのなしな」

先生は、優しくはっきりと口にする。

「もう俺は、十分悩んで考えて出した結果やからな。今さら変な目で見られたからって何もないわ」

「大人やな…」

「俺がほんまの立派な大人やったら、生徒とつきあってはないんちゃう?」

と、先生が皮肉めいた笑顔で言うから、少し笑った。

そういうところ、好きやなぁ。
最後は、同じ目線になってくれようとするところ。
私の負のループにつきあってくれるのは、先生ぐらいしかおらんかもしれん。


車に乗って、つけ慣れたシートベルトをつける。
この時間はいつも寂しい。

そしたら「寂しいなぁ」と先生が言った。

「えっ。タカノリさんも寂しい?」

「ああ。ここでベルトつける時いつも思う」

「私も!」


寂しさも、喜びも
先生と、もっといろんな気持ちを共有していけたらいいな。



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