589.怒られに来たんじゃない

卒業旅行は昼過ぎに解散した。
名残惜しくてまだまだ一緒にいたかったけど、今度は鮎ちゃんが車で迎えにくるという約束を固く交わして二人と別れた。
私だけ違う電車に乗って。



先生からもらった合鍵を使うのは今日な気がして、ちょっと慣れてきた沿線の電車に揺られながら、畑を眺める。

仕事終わってから高速飛ばして来てもらうのも悪いし。
先生は、出入り自由って言ってたし。

手の中の細長い鍵を握りしめて、先生の駅で降りた。


バス停がマンションの近くにあるはず。
駅近辺のコンビニが唯一買いものできる場所。

車運転できればもっと楽なんやろうけど。
免許取ろうかなぁ…。


コンビニで適当にいろいろと買い込み、春の日射しを感じながらバスに乗った。


昨日は妬けて仕方なかったけど……おおらかな風景のこの町にいたら、先生を怪しむような気持ちも消えて行く。

ここで住めたらよかったのになぁ…

と思いながら、先生にメールをした。

『もうすぐタカノリさんの家に着くよ。適当に待ってるー』と。



するとすぐに電話が掛かってきた。
取るや否や『来てんの?』と先生。


「うん、今バスやし話されへん~」

『バス?お前先に来るって言うとけよ、迎えに行くのに』

「はーい、切るね~」

何やらさっそくお説教っぽい口調やったけど電話を切って、バスの降車ボタンを押した。




今日は、先生に怒られに来たんでもないし、ケンカしに来たんでもない。

たくさん抱きしめてもらって、できるならキスもして、もっともっと、不安が消えるぐらいに、先生とたくさん仲良くするために来たんやから。


「ありがとうございました」

バスの運賃箱に小銭を入れて、降りる。

のどかな風景が私を優しく包んでくれている。





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