585.嫉妬で迷子

「葉山から?」

「そうみたい、先部屋戻ってて。電話やから…」

「おけー」

鮎ちゃんだけエレベーターに乗ってもらって、私は広々としたロビーに残った。
正直、鮎ちゃんの前で電話に出たら、「葉山もここに呼べ」攻撃に遭うかもしれんし。

それにしても、プチ卒業旅行と伝えてるはずやのに、電話掛けてくるなんて先生っぽくないなぁと思いながら、電話に出る。

「はーい」

と明るい声で出たものの、向こうはざわざわしてるだけで先生の声はしない。
音量を上げてみると、先生らしき人と、何人かで話す声が聞こえる。

先生、飲みに行ってるのかも。
携帯ポケットに入れてて、当たって電話かかってしまったんかな。

「もしもーし。タカノリさーん」

呼びかけるも全然出てくれない。
諦めて切ろうとした時、甲高い女の人の笑い声が聞こえてきて、そのすぐ後に先生の笑い声も聞こえてきた。

…随分と楽しそうにやってますね。
こっちも楽しいけど、そっちは異性もいるんですね。かわいらしい笑い声でね。

嫉妬のゲージが爆上がりした私は、一度電話を切って、先生の携帯にコールする。
何度かコール音が鳴り、留守電サービスに繋がること数回。

全然出ーへんやん!

イライライラ。モヤモヤモヤ。
今まで、勝手に嫉妬したことはたくさんあったけど、こんなにリアルな焦りを抱いたのは初めてだった。

会社にも女性はいるし、地元のツレに、大学のツレと、ツレ関係の女性もいる。
でも、当然ながら私は、先生のツレの方には会わせてもらったことなんてない。

今日のことも、「ツレと飲んでた」って言うんやろうな。
ってか、ツレって何なん。

イライラしながらも部屋に戻ろうとエレベーターに乗る。
階は覚えてたけど、部屋番号を忘れて右往左往して、鮎ちゃんに出てきてもらう。

「あんた、迷子て!」

「はは……迷ってもうた……」

鮎ちゃんは明るく迎えに来てくれたけど、さっきと全然テンションの違う私を見て、きょとんとしていた。





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