582.父の晩酌

家に帰り、父の晩酌中。
お風呂入ろうと思ってた矢先に呼ばれる。

「あ~、みなみ。ちょっと。葉山君は何か言うてたか」

葉山君…。
父のあからさまな上から目線に笑いそうになりながら驚く。


「何かって、何でしょう…」

「別に言うてなければええんやで?まあ、誠意見せに来た分、ましちゃうか」

と、ビールを煽る父。

父も緊張から解放されて、ほっとしてるのかな。それにしてはお酒進み過ぎの感もあるけど…。
母と目が合い、苦笑い。

「先生ずっと挨拶来たがってたのに、逃げてたんお父さんやん」

ご機嫌なところ悪いけど、つい攻撃。


「逃げてへんわ!仕事忙しいんや」

「先生も忙しいし。お父さん亡くなってからずっと忙しいねん。会社のこととか」

「お父さんまだお若いのに、それは残念やったな………」


あ。父のトーンがしんみりした。
お酒が入ると、喜怒哀楽激しくなるのがちょっとアレなんやけど。
先生もそうかもしれない。

また母をちらりと見、苦笑い。

「先生、申し訳ないって思ってるよ。お父さんの言うとおり、結婚前同棲もせーへんって言われたから」

「ほう。それはまたえらいカタブツやな」

自分で言うたくせに!


「融通きかんところ、お父さんに似てるね」
と母が笑い、「一緒にせんといてくれ」と父がまたビールを飲む。

「まあ、ええんちゃうか。みなみは、まなみと違ってのんびりしとるから、年上の男が合うんちゃうか。あ、でも、あかんと思ったら別れろよ。挨拶に来たからって、結婚するわけじゃないんやからな」

それには、母も頷いていた。
何て不吉なこと言うんやろ、とちょっと悲しくなったけど、父も母も私を悲しませる気もなさそうで。


子供だった私は、両親から「別れる」って言葉を出されるのも嫌やったけど、あの頃より大人になった今なら何となくわかる。

視野を広く持って、自分が幸せになれる道を自分で選びなさいってことやったのかなって、そう思う。



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