576.卒業祝い

インターホンが鳴り、お寿司が来た。

「来た来た、お腹空いたね~」と母。
お金を持って階段を下りていく。


「みなみも手伝っといで。家事も全然せーへんのやから。偉そうなこと言うたけど、嫁に出せるような躾はできてへんわ」

父は先生の方は向いてなかったけど、先生は、それを聞いて笑っていた。
その姿を見て、少し安心しながら、私も階段を下りて行った。

二人を客間に残して、私は母とお昼ごはんの支度をして。

「お父さんと先生どんな話してるんやろ…」って心配してたら

「なー?全然話弾んでないできっと」って母。S。


その後はお寿司を食べて、いい頃合いで、先生のお見送り。

「おじゃましました」

「これからもよろしくね~」

母はいつもの調子。
父も一応見送りには出てきてくれていた。

「ありがとうございました」って先生が父に礼をして、父は「どうも」と言っていた。





せっかく家まで来てくれたので、挨拶の後は、先生の車でドライブしつつ軽く晩御飯を食べる予定にしていた。
私も車に乗り込んで、やっと先生とふたりきり。


せめて家族にだけは、堂々としていられるように、余計な心配かけないように。
何やかんや言って、結局は認めてくれたお父さんとお母さんの気持ちに応えるために。

同棲は諦めた。


「一緒に住むとか、全然言い出されへんかったな……俺」

運転しながら、溜息まじりに先生がつぶやく。


「いいよ。ありがとう……嬉しかった。すごく」

先生だけ頭下げさせてごめんなさい。

「まあ、俺も同棲案には乗られへんかったし。でも、あんまりみっちゃんが言うてたから、影響されそうになったわ」

「はは……ごめんごめん」


もういいよ。先生のあの姿を見たら、お父さんに、頭下げてる姿を見たら、もう、十分。


「でも、いつでもおいで」

先生が、コートのポケットから、長細い鍵を出した。

「え…これ」

「卒業祝いに」

先生の家の鍵。

「出入り自由やけど、日付が変わる前には追い出す約束で贈呈するわ」

「追い出すって」

「はあー……。めっちゃ緊張した。ひとまず無事に済んでよかったわ。俺、ガチガチやったけど、ちゃんとしゃべれてたんかな」


ああ。好き。

同棲宣言できなかったのも、先生らしくて好き。
こんな鍵用意してくれてたことも好き。

「あのさぁ、私、いつからラブホいける?」

「え?行きたかったん?」

「行きたいって言うか、手軽に二人きりになれるし」


なんか、ホッとしたらエッチしたくなったと言うか。
車の中でもいいけど、落ち着けへんし、家遠いし。
先生を抱きしめる場所がほしいだけ。


「卒業祝いにラブホ行くのってどう?」

「どう?って言われても。親に挨拶行った後に、ラブホ行ける神経は俺にはない」

「え、あかん?」

「あかんあかん。合鍵あげたやろ。それ卒業祝いにして」

って言いながらも、先生は「アホやなぁ」って笑ってて。
卑猥なお願いですいません。

ラブホじゃなくても、どこでもいいんやけど。
ただ、先生と、すぐに愛し合える場所がほしいだけ。



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