556.日曜日、誰もいない場所

今日は日曜日。もうすぐ、先生が迎えに来る。
お父さんはいつものように仕事。

「なぁ。お母さん。私やっぱりここから通うの大変やし、一人暮らししたいなって思うねんけど…」

「えー?じゃあおばあちゃんちでええやん。部屋あいてるし」

「えー……うーん……」

実は先生と暮らしたいと私の顔に書いてあったのか、洗濯物干し中の母はタオルを大きく振りながらじっと私を見た。

「……同棲するならお父さんに言うてってよー。その前に、先生は何て言うてはるの?」


私もかごに入っている濡れたタオルを取り、母と同じようにパンパンと広げた。

「先生は何も……」

小さく答える私の隣で、母は手際よく干し進める。

「先生に聞かんと勝手に決めてたらあかんでしょう。何を焦ってるの」

えっ。私、焦ってるん?
自覚なかった。


空になったかごを持ち、洗面所に戻る母の後ろ姿を見ながら、居間のソファに座った。



いままで、先生に話していた「一緒に住みたい」ってセリフは、「好き」とか「会いたい」とかとそう変わらない、愛情を伝えるためのフレーズという感じだったけど、現実と結びつくようになると、なぜか言いづらい。

それはきっと、断られるのが怖いから。

だって先生……
私が思い切って何かを伝えた時、結構な確率で断ってくるんやもん。

最初の文化祭での告白しかり、キスするだのしないだの、エッチするだのしないだの、事あるごとに乙女心が打ち砕かれてきた記憶がよみがえる。

それのトラウマなのか、一緒に住みたいって伝えるのが、なんか怖い。



携帯が鳴った。先生のメール。
『着いたよ』の四文字のみが、画面を照らす。


「いってきまぁす」

「はい、いってらっしゃーい」


2月の終わり、白い息を吐きながら家を出て、寒いのにショートパンツで足出しながら、空き地前に止まった車まで歩く。

先生との待ち合わせでおなじみのこの空き地には、来年マンションが建つらしい。
先生がここに車で来ても、長く待てる場所なくなるなぁ。

でも、もう卒業すれば、うちの前で待てばいいの?
お父さんのお許しさえ得たら、うちの駐車スペースに置けばいいのか。



いろんなことを考えながら車のドアを開けたら、先生が「何ぼーっと歩いてるん」と笑っていた。

ああ、笑ったらかわいいなぁ。
笑ってなくても、私にとってはかわいいけど。

先生は軽く寝癖がついてて、それがまたきゅーん。

「どこ行く?と言っても、人に見つからんとこな」

先生の質問に間髪入れず答える。

「先生の家行きたい」

「また?別に外でもいいねんで。勉強もせんでいいし……」

うん。でも。
なんか、今は、誰もいないところでもっと近づきたい。



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