548.社交辞令と現実逃避

『お疲れ。熱かぁ。本命終わった後でよかったやん』

電話越しの先生は、超普通な様子だった。


確か数時間前、プロポーズしてくれたはずやけど…。
その話には移らないから、自分から持ち出した。

「先生がお嫁さんにもらってくれるんやったら、落ちてもいいかと思って…」

寒気に襲われながらベッドに入り、布団にくるまって電話する。
まだまだ熱上がりそう。


『落ちてもって、縁起悪いこと言うなよ』

「落ちたら結婚って先生が言ったんやん。お嫁さんは縁起いいやん」


なんか噛み合わない。
まさか、さっきの話なかったことにしようとしてる?


「先生、さっきのプロポーズ…嘘なん?」

ずばり聞くと先生は口ごもりだした。


『いや、そういうのもありやぞと言いたかっただけで…卒業したらすぐとか、そんなんじゃないからな。いろいろ準備もあるし…』

「社交辞令なんや?」

『ちゃうよ。そんなん言うたら、みっちゃんも結婚が現実逃避でしかないやん』

「そんなことないよ」


…頭が痛い。
煮え切らない先生の言葉が、全部言い訳に聞こえて、しんどい。
疲れて、涙は出るけど反論する気力はもうない。


「……先生、電話切る。しんどいから…。頭痛い」

『ああ、わかった。大丈夫か?ごめんな、遅い時間に』



電話を切り、そのまま目を閉じた。
涙で睫毛は濡れて、呼吸は熱い。


慰めるために、結婚の話持ち出すなんてずるい。
私がそれでどれだけ嬉しいのか知ってたら、そんな軽く言えないはずやのに。

先生から見れば、私の本気も現実逃避にしか見えへんのか、と落ち込んだ。


先生のひとことで、私の心は浮いたり沈んだりする。
こんなにも影響を受けてることを、先生はきっとわかってない。




悶々としていたら、メールが来た。


『どうせなら顔見てプロポーズしたいから、少し待ってて。今日はよく寝ーや』


読みながら涙が出る。

相手のことがわかってないのは、私も。
いつも、こうして態度で示してくれているのに、足らなくなって拗ねて、困らせて。


『先生、大好き』とメールした。
その後は大抵、『わかってる』と返ってくるのに、違った。


『みなみ、大好きやで』


嬉しいのと、気恥かしいのとで笑ってしまった。
次会えた時は、名前で呼んでくれるかな。

面倒な奴だと自分でも思う。
でも、先生のひとことで、私はこんなにも幸せになる。




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