546.缶コーヒー一本分のドライブ

先生の大きなてのひらで、ポンポンと背中を優しく叩かれる。
それでも私は動かずに抱きついたままでいた。

「おーい。みっちゃん。人通ってるし、ちょっと中断して」

「………」

逆らうかのようにぎゅーっと抱きつく。
せっかく会えたのに、離れたくない。


「先生、もう帰るん…」

「いや、飯食ってから戻るけど…」


お腹空いてるのか。
じゃあ、あんまり引きとめても悪いなぁ。

先生はたぶん、かなり頑張って時間を作ってくれたんだろうから、「帰らんといて」「もっと一緒にいたい」とか言ったら、きっと困らせる。

まだまだ一緒にいたいけど…。
後ろ髪を引かれながらゆっくり先生から離れたら、先生はおもむろに小さい紙袋を握らせた。


「え、何……」



……お守り?


「さっき神社寄ってきた。鉛筆とかは別に使わんでいいけど、なんかご利益ありそうやし」

鉛筆と消しゴムと、合格祈願のお守り。


「ありがとう…」

「できれば一緒に合格祈願行きたかったけどな。初詣も一緒に行けてないしな。でも、来年は気にせず行けると思うから…」

先生、合格を願ってくれたんや。
お守り買ってくれて、私のこと考えてくれて…。


「あー。もう、ほんますぐ泣くなぁ」

先生は、下唇を噛んで涙を我慢している私を覗き込み、笑っていた。

「だってこんなん感動するやん」

「あ、そう。それはよかった」

そっけない返事。

けど、何でそっけないのかというと、先生も今、照れてるから。
それがわかっているから、そっけなさも逆に愛しい。


キスもしないで、気分がほぐれるような笑える会話をして、缶コーヒーを飲みきるまで、少しだけ遠回りして、家まで送ってくれた。
触れあえたのは、最初に抱きついたのと、たまにつないだ手だけ。

だけど、心はとても満たされた。
ほんまに受かりそうな気がしてきた。



「じゃあ、がんばれよ。あったかくして寝ろよ。腹出して寝るなよ」

「お腹出してないし!」

軽口をたたきながら、車を降りる間際にぎゅっと手を握り合って、離れた。


「ありがとう、先生!」




次、二人で会える時は、合否の結果が出る時。
バレンタインを少し過ぎた日。

その時は、笑顔でいられたらいいなあ。



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