545.缶コーヒーと先生のぬくもり

しかし、電話には出てくれない。
近くにいるなんて言われたら、会いたくなるのに。
ちょっとだけでも顔が見れたらなあって、思ってしまうのに。

…もう。

電話かけ続けて、運転妨げるのも気が引けて、駅まで歩くことにした。


寒い。
びゅっと風が吹くたび、耳がちぎれそうに痛いし、頬も冷たくなる。



やっと駅が見えたころ、白い車が停まっていた。上等な長い車。
先生の車ではない。

がっかりしながら横切ろうとすると、「おい、こっち」と声がした。

この声は。

「乗れ、乗れ」

私に手招きしているのは、ビジネスマン仕様の先生。
自動販売機の前から駆け寄ってきた。


「えーっ、車違う」

「会社のやから。はよ乗って、誰か通ったらあかんから」

「うんっ…」


待っててくれたん?
こんな白昼に、こんなところで会ってもいいの?

車に乗り込む。
いつもと違う内装が落ち着かない。
先生も、いつもと違ってピシッときまったスーツ姿。
違う人みたいでドキドキする。


先生は、往来する人々を見ながら、私に缶コーヒーを渡した。

「ほら」

「あっつ!」

熱くて持てず、ゴロンゴロンと足元に落とす。
そして、結局先生に拾ってもらう迷惑な奴。

ハンカチに包んで持つと、ぽかぽかあったかい。
冷えた手が温まっていくのを感じながら、会えた喜びを噛みしめる。

ベルト装着にもたついていると、先生の手が出てきて簡単に嵌めた。
受験前の緊張が、先生の優しさで解される。


「用事ちょっと早めに終わったから、時間できて、ちょうど会えたな」

家まで送ったらすぐ会社戻ると話している先生を、じっと見つめる。
すると、先生は話すのをやめて、私を見つめ返した。


先生が、そこにいる。

「…先生」

手を伸ばして、先生の胸にすがりついた。
先生は振り払うこともなく、セーラー服の私を抱きしめた。


会いたかった。

来てくれて、ありがとう。




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