543.父と対峙する

家に帰ると、父がごはんを食べていた。

「みっちゃんはごはんいるの~?」と母が聞いてきたので、「後でいい」と答えて、父の向かいの席に着いた。

父に顔を合わさずに部屋に上がるという手段もあったけど、鉢合わせしてしまった今、あんまり誤魔化したくない気持ちもあった。

受験終わったら先生も挨拶来るって言ってるし、なんとなく母も応援モードやし、父にも、先生が素敵な人だとわかってもらいたい。

そんな心持でいた私に、父がぼそっと言った。




「えらい年食った彼氏やな」






あ、
そう来た?




「そうかな?私より年は食ってるかもしれんけど」

余裕の笑顔で返すと、父はフンと鼻を鳴らした。


「ロクなもんじゃないな。生徒に手ェ出すような男は」


ちらっと母の方を見たら、肩をすくめていた。
どうやら今、母が父に少し先生のことを話してくれていたみたい。

母はふきんで手を拭くと、食卓までやってきて父の隣に座り、話し始めた。


「お父さん、あの人、悪い人じゃないよ。…私もよう知らんけど、そう思うよ」

「お母さんも知らんのかいな」

「いやあ、熱心にみなみの勉強見てくれはるし、いい人よ。たぶん」

たぶんて。
お母さん、先生のこと「よう知らんけどいい人」って印象やったんや…。

母の微妙な援護射撃に、父の表情は緩むことはなかった。



「とにかく、俺は認めん。爽やかに挨拶しようが、人間として信用でけへんからな。みなみも、何ぼーっとしてんねん。男と会うヒマあったら勉強せんかい!」

「だから、先生は勉強見てくれて…」

「口答えするな!」

「何でそんな怒られなあかんの!?」

私と父の声がどんどんボリュームアップする中、母が遮った。


「もういい!もうやめ。みっちゃん、勉強しー。親子ケンカしてるヒマあったら、勉強勉強。お父さんご飯中やから」

「だってお父さんが…」

「…いいから。アンタ。落ちるで」


母の不吉な言葉と凄みで背筋が凍る。



「……もう!わかったよ!」



先生とつきあっていたら、いつかは父にもおつきあいを知らせる日が来ると思っていたけど、くやしい!

反論させてもくれなくて、悔しさで唇を噛む。



先生のこと知らんのに、お父さんに何がわかるん!
お母さんも、「たぶんいい人」て!
ほんまにいい人やのに!



そんなふうに思っていた当時の私。
娘の幸せを願う父親の気持ちは、全然わかっていなかった。

ただ、父と母は私に幸せでいてほしかっただけなのだと、自分が親になってから気付く。




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