523.先生のキス

先生んちの洗面所の鏡で乱れた髪を整えて、ちっちゃいポーチからリップクリームを出して塗る。


もう帰る時間。

服はもう完全に乾いていたし、そもそもこの数時間、服が必要なかった。
ずっと裸で、先生といて。

激しくて、濃くて、逃れられなくて、擦り切れるほどして、魂が抜けた…。


鏡に映る顔はまだ赤い。


すると、先生はまるで激しく愛し合ったことなんて忘れてるかのように、洗面所にズカズカと現れる。

「みっちゃん、用意できた?」

「あ、できたよ……」

「荷物これ?」

先生は、廊下に置かれている、本日ほとんど使わなかったトートバッグを持った。


なんでそんな平気なん、先生。
あんなことやこんなことの後でそんなスンとした顔できるってすごいな。

洗面台の横に置いていたリングを左手薬指につけて、玄関まで走った。


「ちょっと遅くなったかな」

サンダルをはいている私の横で、先生が腕時計を見ながら言う。
私もその腕時計を覗き込むと、ひょいと見せてくれて、そのまま片手で抱きしめられた。


そして、顔が近づく。
軽いものではなく、さっき寝室で繰り広げられたようなキスがまた始まる。
抱擁が終わるまで、西日で熱くなってる玄関のドアにもたれて、背中が熱くなった。


先生のキスは、今まで手加減してたんやなと気付いた。
この日は、大人の女の人にしてるみたいに、ほぼ激しいキスのみ…。



帰り道の車の中、落ちた夕陽を眺める。
家につく時には、もう夜空に変わってるはず。

先生は無言で運転する。


これからもずっと、先生と一緒にいたいと思ってる。
こんなにも求められたことも嬉しいはずなのに、先生が先生じゃないように見えた。

幸せやのに、大好きやのに、ちょっとだけ怖いって思うのは、何なんやろ。
きっと先生も同じように、思っていた私と違う私を感じる時もあるんやろうけど。

激しいのが怖いって思うのは、何なんやろう。
私は、どうしたいんやろう。




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