510.夏の日

皐月ちゃんは、もう私が話してくれないんじゃないかと思うと、怖くて目が合わせられなかったと言っていた。
帰り道、それを、泣きはらした目で、困り顔で笑いながら話してくれた。

胸が締め付けられる。

「みなみちゃん、うち寄って帰る?」

「いいの?皐月ちゃんは家庭教師は?」

「今日はないねん。今月から先生も変わるねん」

「そうなんや!よかったなぁ」


皐月ちゃんにしつこくしていた先生は、皐月ちゃんに気がないとわかると、自分から辞めたらしい。
その件こじれんでよかったなぁと話しながら門まで歩いていたら、遠い後ろから「みなみーぃ!!」と鮎ちゃんの声がした。

「あっ、鮎ちゃん!」

皐月ちゃんと立ち止まり、鮎ちゃんが走ってくるのを待つ。


「あんたら一瞬で仲直りしてるやん!心配したでー!」

鮎ちゃんはわははと笑いながら、皐月ちゃんの肩を組んで揺り動かす。
皐月ちゃんは嬉しそうに笑って鮎ちゃんの抱擁を受けていた。


「鮎ちゃんも家来る?久しぶりに、よかったら…」

「いーの?行く行く!」


鮎ちゃん。

きっと、帰りも心配してくれて待ってくれてたんやろな。
お昼も律儀に来てくれて、ありがたくて、私にはもったいないぐらいの親友。



9月の暑い夏の日、久しぶりの三人組で、皐月ちゃんの家にお邪魔した。

お母様はご用事があり、お父様は学会で不在。
皐月ちゃんが淹れてくれたアイスティーは、見るだけでわかる高級グラスに入って、見るだけでわかる素敵なお盆に載せられてやってきた。

「さー、どうぞー。おいしくなかったらごめん」

「皐月が淹れたならうまいに決まってる」と鮎ちゃんが即答し、一度爆笑した。


楽しい雰囲気。
仲直りできて、すごく嬉しくて。

皐月ちゃんの部屋に飾られていた写真立てには、私や、先生や、さっちんや、莉子にマーヤ、鮎ちゃん、バスケ部のみんながいて。

でも、リクの姿はない。


氷たっぷりのアイスティーを飲みながらそれを見た後、私は、グラスをお盆に置いて、ある決心をした。



にほんブログ村 恋愛ブログ 教師と生徒の恋愛へ

  恋愛ブログ 教師と生徒の恋愛
  恋愛ブログ 秘密の恋愛