508.胸が痛い

教室に戻ると、皐月ちゃんと目が合った。
…けど、すぐふいっと逸らされる。

それを見かけたさっちんが、まさかの舌打ちをした。

「さささっちん…聞こえるから」

「ああいうネチネチしたんいややわあ~!女子校!って感じで!」

「いやいや、ちゃうねん、あのなさっちん…」

その言い方は女子校全体をディスってもうてるから…
それは言いすぎやから。

皐月ちゃんは、さっちんの、舌打ちからのコメントが聞こえていたようで、顔を真っ赤にして席に着いていた。
さっちんは、ちっとも悪いと思ってない様子で、自分の教室に帰って行った。


胸が痛い。

ああ…

もう。もう……




5時間目の授業が始まる。
教科書を熱心に見てるふりをして、私は溢れそうな涙を隠した。

皐月ちゃんが怒るのは納得として、さっちんの発言も、正直……ちょっと共感する部分もある…。


どうしたらいいん。

どうしたら、波風立てんと過ごせるん?


結局、自分で何とかするしかないのに、何ともできない。
サブバッグで悲しく光るキーホルダーが視界に入る。

先生は、今のうちに人間関係を学べって言うけど、こんなに心が擦り切れそうなほど嫌な思いをしないと、学ばれへんの?




関係のない人まで巻き込んで、こんなん……



私は、ノートの端をちぎり、皐月ちゃんに手紙を書いて回してもらった。

『ちょっと、話できひんかな?』と。


それを静かに読む皐月ちゃんの横顔が見えたけど、怖くて直視できなかった。


人とぶつかることがこんなに怖いなんて。
私はとても臆病な人間だと思った。




5時間目が終わっても。帰りのSHRが終わっても、皐月ちゃんから返事が来ることもなかった。

図書室でちょっと勉強して帰ろうとした時、「みなみちゃん」と後ろから声を掛けられた。
そこには、気まずそうに私を見上げる皐月ちゃんの姿があって、どこかおどおどしたような顔をして立っていた。

「皐月ちゃん…」

「話……って何?」

「……うん。ちょっとしゃべれる?」

なんか、話しているとどっちが怒ってるのか、どっちがおびえてるのか、わからなくなる。
私が皐月ちゃんを完全に怒らせたものだと思っていたけど、皐月ちゃんは私の表情をうかがうようにしている。


「中庭、行く?」


中庭の白いベンチ。
残暑厳しい季節で、長時間はいられなさそうだったけど、私たちはりんごジュースを買って、そこへ向かった。



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