425.マスクマンの言葉

「帰られへんやろ、一人では。徒歩やのに駅までどんだけかかると思ってんねん」

「帰る。歩く。」

もしもの話で責めてくる先生とは一緒にいたくない。
本当は不安も受け止めてあげたいけど…私ダメだしされるだけでなんにもいいことないやん。


「おい、みっちゃん。待てって」


バッグを取り、玄関で靴をはく私の所まで先生が追いかけてくる。

さっき開けてくれたドアを自分であけようとしたけど、なんか鍵がようわからん。
ガチャガチャやってると、「そこ、左に回さな開けへんで」と先生に冷静に言われる。


お互い引っ込みがつかない状況で、優しい言葉が出せない。

ガチャリとドアハンドルを回して開けたら、先生もスニーカーを履いた。


「散歩行こ。晴れてるし」

「…うん」

「マスク取ってくる」

「うん……」

そうして、ギクシャクしたまま、マスクマンとマンションの周りを散歩した。



マンションの敷地内には公園があり、砂場と遊具があった。
やっぱりここ家族向けやんなぁ、と思いながら、先生と通り過ぎる。

いつか、先生と家族になる日が来るかな。

私はその日が早く来たらいいなと思ってるのに、進学しろとか就職しろとか言うてくるのは先生やのに、それで不安になってるなんて、本末転倒やん。
思い出してムカムカしていると、先生がじっと私の顔を見ていた。


「何?」


微妙に不機嫌に答えたら、先生はまた前を向いて、私の手を取って歩き出した。


「…さっきはごめん。信じてないとかじゃないねんけど…悪かった」


意外なほど素直に謝ってくれて、思わず絶句した。
先生は気まずそうな顔をしながら歩いている。


「……私は、先生が思うほど子供じゃないよ」

「そうかもしれんな。俺の方があかんとこあるな」

「うん…間違いなくある」

「すいません…」


殊勝な態度の先生に、図に乗って畳みかける私。


「ネガティブ撒き散らし過ぎやで先生…」

「……言いたい放題やな、お前…」


しゃべってたらだんだん笑けてきてヘラヘラしたら、先生の目元が微笑んだのがわかった。
マスクマンが発する言葉はどれも優しかった。



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