558.デリカシーのない人

「まずは付き合い認めてもらわんと。物事には順序があるやろ」

エッチしてる最中ならもっと甘い返答なはずやのに、冷静極まりない返事に心が折れかける。
同世代にはない、先生の淡々とした教師っぽい話し方は、夢から叩き起こされて、自分の幼さを痛感する。


「……って、みっちゃん聞いてる?」

「わかってます。聞いてます」

「じゃあ今俺何て言った?」


先生、お説教の顔やん。

復唱を求められたことにイラッとしながら

「『物事には順序があるやろ~?』」
と下あごを突き出して言ったら、先生がギョッとした。


「言い方は似てるけど、俺そんなしゃくれてんの?」

「怒った時はこんな感じ」

「いや、怒ってないやん。えー、俺そんな顔してんの?」

「してる」

だんだん論点がずれて、決着つかずに駐車場に到着した。
軽くギスギスしてしまって、先生のちょっと後ろを歩いていたら、先生は何も気にしてない様子で振りかえる。

「腹減った?どっか寄ればよかったかなあ」

「………大丈夫」

「まだ怒ってんの?」

先生は、わけわからんといった感じで軽く溜息をつく。


……怒ってるんじゃないねん。
なんか、ひっこみつかずにすねてんねん!

一緒に住みたいって、恥ずかしいけど言うたのに、ポーンと一蹴された感じが悲しいし、恥ずかしいし…!
そんな気持ち、先生は抱いたことないのかな……?


「先生、デリカシーないねんもん」

「俺が?お前やろ」

「私ィ!?」

なんで私ー!?
続いて先生は憤慨した。

「プロポーズも流すなよ!さっきの!」

「プロポーズ?わからんかった」

「マジか!もう絶対言わん」

ええ?いつのまにそんな嬉しいこと言ってくれた?
さっきの会話を一から思い返しながら、先生の部屋に到着した。


先生の部屋は、先生のにおいがする。
靴を並べて家に入ったら、廊下で行く手を阻まれた。そして捕獲される。

「キャー!」

「変質者みたいに言うな」

先生にぎゅーっと抱きしめられて、先生の肩から顔を出して、ぷはっと息をする。

「先生…」

呼びかけても、黙って抱きしめたままの先生。
寝ぐせを触ったら、ぱっと顔が離れた。

至近距離で見つめあったら、さっきまで頑なに張ってた意地とか、そんなのがふわっと消えて、愛しさだけが胸に残る。




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